新型コロナウィルス対策のロックダウン制限が緩和されて社会が正常を取り戻そうとするなか、世界中のオフィスワーカーたちには、全く新しい働き方への適応が求められています。
ソーシャル・ディスタンスに関する一連のルールおよび新しく設定された厳しい清掃基準に基づき、私たちのオフィススペースは再設計され、生まれ変わりました。廊下はビルの周りを囲むように再設計され、精密な一方通行ルールが採用されています。手指の殺菌消毒用品があらゆるところに設置され、会議室は今までと比べてゆったりとした使用方法になりました。
しばらくは自宅で仕事を続けたいという方がいる一方、多くの従業員はオフィスに戻りたいと熱望しています。リモートワークにさまざまな特典があることも確かですが、ビデオ電話で実現できることには制限があります。チームが物理的に同じスペースで仕事をすることによって、協力し合い文化を共有するという結束力が生まれ、イノベーションが加速化され、さらにメンターによる指導によりお互いを高めあうことができます。
では、オフィス業務に戻った際のチームの健康と安全を保障するために、どうしたら企業はできる限りの対策をとることができるでしょうか?オフィスがすべて同じというわけではありませんが、ほとんどのワークスペースで共通する対策には以下のようなものがあります。
- より徹底した清掃を頻繁に実施
- 職場での決まりごとを記載した案内を戦略的に設置する
- ハンドソープや除菌シートなどの消毒剤を配置する
- 窓を開けたり HVAC システムを使用したりして建物内の空気の流れを改善する
- ソーシャル・ディスタンスを維持できない場合はマスクの着用を義務付ける
再構成されたワークスペースの基盤を形成するのに一番重要なのは、ソーシャル・ディスタンスに関するわかりやすいガイドラインを作成し、周知を徹底することです。ただし、職場でのソーシャル・ディスタンスを考える前に、まずはソーシャル・ディスタンスとは何かについて理解する必要があります。
ソーシャル・ディスタンスとは
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を防ぐため、人々の物理的な接触を制限するよう設定された一連のルールをソーシャル・ディスタンスと呼びます。主に、混雑したスペースを避け、個人間の距離を少なくとも 6 フィート(2 メートル)維持し、抱擁や握手などといった他人との物理的接触を避けることが定められています。
病気の蔓延をより効果的に防ぐためには、ソーシャル・ディスタンス以外にも、目や口に触れないようにする、外出する際はマスクを着用する、石鹸を使って 20 秒以上かけて手を洗うなどといった個人レベルでの対策が必要です。「ハッピーバースデートゥーユー」を頭の中で 2 回歌うと、およそ 20 秒になります。
ソーシャル・ディスタンスが重要である理由
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、ソーシャル・ディスタンスは、社会が安全な再開を続ける際に新型コロナウイルスへの感染を減らすのに最も効果的な方法の一つであるとしています。新型コロナウィルスについてはまだ研究途中にありますが、世界的な保健機関による研究では、COVID-19 が急速に感染を広めた理由の一つに、軽症者や無症状の感染者がいるということが挙げられています。
無症状の感染者は、触ったものや、空気中に吐き出された微小な飛沫物により感染を広げてしまいます。彼らは身体的に健康であると感じているため、友人宅を訪ねるなど、いつも通りの行動をしてしまうことが多くなっています。
ソーシャル・ディスタンスは、ウイルスに感染する個人的なリスクを下げるだけでなく、すでに感染している人が COVID-19 を無意識のうちに近くにいる人たちにうつしてしまうというリスクを大幅に減らすことにつながります。CDC では、高齢者や基礎疾患を持つ人々など、ウィルスに感染した後に重症になるリスクが高い人々を守るために、ソーシャル・ディスタンスが特に重要であるとしています。
COVID-19 に関する情報は日々変化していますが、ソーシャル・ディスタンスが有効であるということはすべての専門家たちによって提唱されています。新しい COVID-19 の症例に関する要因についての意見は分かれていますが、CDC を含む専門家は、適切に実行された場合、ソーシャル・ディスタンスが病気の蔓延を防ぐのに非常に有効であると結論付けています。
WeWork は、ソーシャル・ディスタンスのルールを適切に守りつつ、健康と安全が最優先されたコミュニティ型ワークスペースでチームが勤務できるように、さまざまな新しい対策を導入しました。すべてのビルでの除菌の強化に加えて、私たちは共有スペースを再設計し、スペースを開けて配置した座席によってバッファーゾーンを設け、推奨行動を促すための標識を配置して、チームのワークスペース内での安全を確保しました。主要な WeWork 機能の多くは以前と変わらず、広々としたプライベートオフィスや 1 人用のヌックなど、居心地の良い環境づくりにも引き続き力を入れています。
職場でソーシャル・ディスタンスを保つためのヒント
1. 同僚から2mの距離を保つ
これは、ソーシャル・ディスタンスの基本的ルールです。できる限り、同僚との距離を2メートル以上に保ちましょう。このルールの維持には、以下のアクションが有効です。
- 自己紹介する際に握手やハグをする習慣をやめる
- 対人距離の確保を優先してデスクを並び替え、向かい合って作業することがないようにする
- ビル内で移動する際は他の人との距離を十分にとる
WeWork では、ソーシャル・ディスタンスの新しいルールを遵守できるように、共有スペースや会議室の密度を低下させ、一人ひとりのスペースをより広く確保できるようにしています。ラウンジとパントリー内では使用可能な席がステッカーやバッファーゾーンで明示され、フロアには一方通行を表す標識が設置され、エレベーターの定員は通常よりも少なく設定されています。
プライベートオフィスのメンバーは、人員をローテーションして配置するなど、組織レベルでの変革をはじめ、透明なパーテーションなどの物理的な対策を導入し、ワークスペースをソーシャル・ディスタンスに適応させることが推奨されています。ワークスペースの再設計については、WeWork のスタッフがアドバイスいたします。
2. 過密エリアを避ける
ビルの中で人が集まりがちな場所(カフェテリア、キッチン、ロビー、コーヒーエリアなど)を特定し、計画して使用するか、完全に回避します。共同ダイニングエリアではなく、デスクで食事をとることを検討してください。昼食時間後にエレベーターが満員になるのを避けるために、昼休みの時間をずらすことも有効です。
WeWork スペースではアメニティエリアを可能な限り解放しています。ゲームルーム、ビリヤード台、バリスタバーは定期的に最新のルールに合わせて清掃されており、それぞれの部屋に合わせて設定された距離のガイドラインおよび最大収容人数を明確に記載した看板が設置されています。
3. 社外で会議を開催する
対面での会議をできるだけ減らしましょう。チームを1か所に集めるのを避けられない場合は、屋外のどこかで開催するか、ソーシャル・ディスタンスを確保できるように適切に調整された会議室での開催を検討してください。
WeWork では、最大収容人数および椅子の数を減らし、使用可能な席にラベルを付けることにより、すべての会議室を再設計しました。新しい会議室の収容人数はスペースアプリで確認でき、会議室を安全に使用するための距離に関するルールが記載された案内がドアとテーブルに設置されています。多くの WeWork ビルには、テラスや庭園などの屋外エリアもあり、メンバーが安全に過ごすことのできる広いオープンスペースを十分に提供しています。
4. ビデオ会議ツールを使用する
この数か月間で、ビデオ会議ソフトウェアの使用が急激に増加しました。これからオフィスでの通常業務に戻る人が増えるにつれ、Zoom、Google Hangouts Meet、Skype などのツールは、内部連絡だけでなく、以前は対面で行われていたクライアントとのコミュニケーションやコラボレーションを行う方法として、重要な役割を引き続き担っていくことが予想されます。
可能な限り、クライアントとのコミュニケーション、リモート勤務する同僚との連絡、さらに同じビル内の同僚との連絡にもビデオ会議ツールを使用するようにしてください。WeWork スペースの多くでは、周囲の人と物理的に離れた場所にある電話ブースを使用してビデオ通話に参加するのが理想的です。
5. ペンや紙などを共有しない
これまでも印刷は必要最低限に抑えることをお勧めしていましたが、これからは、文房具や印刷された紙などといった物理的なアイテムのチーム内での共有を禁止することをお勧めします。これは、COVID-19 が数時間、あるいは数日間物質の表面にとどまる可能性があるだけではなく、紙を手渡す場合、ソーシャル・ディスタンスのルールを破ることにもつながるからです。
印刷された紙の配布という手順をチームのこれまでのワークフローから排除することで物質的なアイテムの共有を防止できます。オフィスでの通常業務に戻る前にこの新しいワークフローをチーム内で共有し、古い習慣に戻ってしまうことがないよう、チェックすることも重要です。
6. できる限り階段を使う
エレベーターは最も必要とする人が使えるように使用を避け、ビルごとの新しい使用方法についても確認しておきましょう。ほとんどの場合、エレベーターの定員は少なくとも通常の 50% 以下に設定されています。ロビーでエレベーターを待つ間も、他者との間に2m以上の距離を保つことにより、ソーシャル・ディスタンスを徹底してください。WeWork が管理するスペースのエレベーターロビーやエレベーター内では、床に対人距離に関するガイドラインがわかりやすく表示されています。
可能であれば、エレベーターの代わりに階段の使用を習慣にすることを検討してください。階段は一方通行になるよう設計されているため、これによりデスクから移動する際に同僚との距離が縮まってしまうことを防げます。WeWork は、物件の所有者や不動産管理者と協力して、新しいエレベーターガイドラインと定員制限を設定しています。
7. 標識に注意する
一方通行システムの徹底のため、オフィスには大型店や屋内の公共スペースと同じようにさまざまな標識が配置されています。廊下で同僚とすれ違わないように別のルートを使用しなければならなかったり、使い慣れた階段が上方向あるいは下方向のみに限定されていたりしますが、これらの標識には必ず従ってください。標識に従う人々が多ければ多いほど、システムはより効果的になります。
WeWork のコミュニティ型ワークスペースでは、以下のような掲示に注意してください。ラウンジと廊下には、ベストプラクティスに関する新しいガイダンスと明確な指示が表示されています。床と壁には、一方通行システムを示すシールが貼られています。通常、安全な対人距離を保つために2mちょうどの間隔をあけて貼られています。また、共用エリアと会議室では、座席間にバッファースペースができるよう色付きのラベルが貼られています。
8. 違反を見つけたら報告する
ワークスペースでのソーシャル・ディスタンスに関するルールの多くは、オフィスでの通常業務開始前に作られたものです。したがって、オフィススペースでの業務が始まってから予期しない問題が起こることが考えられます。
オフィス内で安全に対人距離を確保できないと感じるエリアを見つけた場合は、それを書き留め、問題についてチームおよびオフィスマネージャーに相談してください。新しいオフィスのレイアウトは、必要に応じて柔軟に適応できるように、障害物や不明確な看板は簡単に修正できるように設計されています。
9. マスクを着用する
狭い廊下やエレベーターなど、2m以上の距離を作るのが難しい場所や状況が考えられます。このような場合は、マスクを着用し、できる限り顔と顔が触れないようにしてください。
WeWork では、コミュニティチームと作業ベンダーは、食べ物や郵便物などを扱う際にフェイスカバーと手袋を着用します。どこに行くにもマスクを携帯することをお勧めしますが、紛失したり忘れたりしてしまった場合は、チームのメンバーに相談してください。使い捨てのフェイスカバーを提供できる場合があります。
あなたのチーム向けのソーシャル・ディスタンス戦略を策定する方法
効果的なソーシャル・ディスタンス戦略を立てるには、まずオフィスの通常の定員を理解しておく必要があります。デスクを移動し、レイアウトを変更し、看板を配置する前に、所定の時間にオフィスの各部分に何人収容できるか把握しておかなくてはいけません。対人距離を保ちつつオフィス内で快適に業務に取り組める従業員数を確定したのち、全員がエリア間を安全に移動できるようにオフィスの過密対策を立て始めることができます。
オフィス勤務に戻る必要がある従業員を特定する
リモート勤務を続けることのできる従業員とオフィス勤務に戻る従業員を特定する際は、個々の役割や希望だけでなく、個人的な状況についても配慮したうえで決定しましょう。COVID-19 に感染した場合に重篤な状況になる可能性のある従業員、あるいはそういった家族のいる従業員については、特に注意が必要です。
すべての作業エリアの定員を把握する
デスクとデスクの間に十分なスペースを作ることはソーシャル・ディスタンスの第一歩ですが、従業員はオフィスのすべての部分で対人距離を保つ必要があるということを覚えておいてください。エレベーターやエントランスなどの人通りの多いエリア、キッチンやトイレなどのより狭いスペース、さらにはプリンター、スキャナーなどといった人が密集しやすい共有設備周りのスペースについても考慮に入れなくてはいけません。
従業員をグループ分けし分散出勤させる
チームを複数のグループに分割して出勤をずらすことで密集を避けます。たとえば、チームを半分に分け、半分が 1 週間オフィス勤務をし、次の週は残りの半分がオフィス勤務にあたります。これにより、オフィスの占有率が一時的に半分になり、密度が下がり、従業員がより簡単に対人距離を保つことができるようになります。
従業員が公共交通機関を利用しなくても済むようにする
ソーシャル・ディスタンス戦略は、オフィス内に限ったものではありません。ピーク時の通勤を回避するために、チームに通常より早い、あるいは遅い時間に出勤する柔軟性を与えます。自治体が発行する公共交通に関する勧告に注意を払い、その指針を政策に組み込んでください。サイクリングバウチャーやライドシェアサービスを使用した従業員にクレジットを与えるなど、公共交通以外の通勤方法を使用するインセンティブを提供することも検討してください。
チームのソーシャル・ディスタンス戦略をどのように策定した場合でも、従業員がオフィス業務に戻る前に必ずプランを明確に伝達してください。新型コロナウイルスの感染拡大は、誰も予想できなかった方法でオフィスを変革しました。オフィスでは現在、従業員全員の健康と安全がこれまでにないほど最重要視されています。チームが新しい働き方に慣れていくにつれて調整できるよう、ガイドラインは柔軟に作成してください。
Steve Hogarty 氏は、ロンドンを拠点とするライター兼ジャーナリストです。 City AM 新聞で旅行記事の編集者として、City AM マガジンでは編集局次長として働いており、テクノロジー、旅行、エンターテイメントに焦点を当てています。
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