WeWork のデザインチームは、現代のワーカーをサポートするためにワークスペースを全く新しくデザインし直すことを得意としています。創業以来、それが私たちの仕事だからです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が感染拡大した際、私たちは自らに新しい課題を課しました。世界中で 800 を越す WeWork ロケーションで内部基準を強化し、WeWork コミュニティの健康と安全を優先させることにしたのです。
スペースを強化するにあたり、重点的に焦点を当てた分野は次の5つです。
- 殺菌の強化 人々が頻繁に触れる部分の表面や共用エリア、物品を 2 時間ごとに殺菌する新しいルーティンを定めました。また、誰とも接触せずに郵便物や荷物を受け取れるようにし、さらに必要に応じて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対応する消毒も即座に実施できるようにしました。
- 業務上必要な距離 WeWork のスペースでは密の状態を避けるため、会議室などの共用エリアでは座席の配置を変更するなど、仕様を変更し、従業員が安全な距離を確保できるようにしました。
- 推奨行動を促すための標識の設置 共有エリアの収容人数に関する新しいポリシーを浸透させるため、工夫をこらした標識を設置しました。標識は、従業員たちの仕事の妨げにできるだけならないように設置しています。
- 消毒剤の配置 洗面所にはハンズフリーのソープディスペンサーを設置し、消毒シートワイプやハンドサニタイザーディスペンサーも無料でご利用いただけます。さらに、パントリーで使うアイテムを使い捨てにしたりするなど、新たな対応も採用しています。
- HVAC の改良 暖房、換気、空調システムにより、外気を室内に最大限に取り入れ、室内の空気をよりクリーンにし、スペース全域でろ過された空気を循環させています。
このような対策を 800 以上のロケーションで講じています。対応策を考えるにあたり、エンジニアリング、建築、インテリアデザイン、ワークプレイス戦略、オペレーションなど、複数の部門や専門分野をまたいだ専門知識を活用し、迅速に実行に移しました。それでは、私たちが実際にどのように行ったのかをご紹介します。
大がかりな戦略を考案する
私たちはグローバルレベルでの再設計を余儀なくされました。スペースの設置に関する規制は、日々変化し、また国によっても大きく異なりました。ハンドサニタイザーのような物資のサプライチェーンは、当初、世界的にも非常に緊迫した状況になりました。
ですから、私たちは即座に解決策を導き出さなければなりませんでした。WeWork の調達チームとサプライチェーンチームは、多くの信頼できるベンダーに連絡を取り、物資を調達するために日夜奮闘しました。ニューヨーク市を拠点とする WeWork 本部デザインチームは、地域のデザイン責任者と協力し、従来のオフィスフロアプランを超えた多様なワークスペース環境を実現するために、さまざまな対応策を実施しました。一般的な商業不動産事業者のワークスペースプランでは、主にプライベートオフィスや会議室のみを取り扱っていますが、WeWork のスペースには、ラウンジ、プライベートヌック、パントリー、プライベートな休憩室、予約可能な会議室などが備わった多様な専用スペースやフレキシブルなワークスペースが用意されています。
私たちの重要な目標は、それぞれの対策がソーシャルディスタンスや公衆衛生の面でメンバーの期待に応えるものでありながら、それと同時に WeWork スペースでメンバー同士の結びつきやコミュニティとしての一体感を提供するという WeWork の価値命題を変わらずに維持することでした。
このアプローチを採用するにあたり、私たちはメンバーや企業のお客様に意見を伺い、オフィスへ復帰する際、何が優先事項となるかを学びました。これらの貴重なインサイトに加えて、コンサルティング業界の専門家からフィードバックを受けたり、保健当局や自治体の職員から公衆衛生に関する助言を受けたりなど、多くの情報を元に私たちは計画を立てました。
スペースを新しくデザインし直すために、私たちはポートフォリオのすべてにおいて明確な設計ガイドライン基準を定めました。この基準は、スペース内に標識を設置し、椅子の配置を変更する作業においても、非常にきめ細かい手順となりました。しかも、これらのプロジェクトすべてを Zoom で管理したのです。
いくつもの部門横断チームが毎日顔を合わせ、これらの設計基準がきちんと遵守されていることを確認しました。さらに、実行することはすべて、複数のチームが合意し、リーダーシップが承認し、市場ごとの微妙な違いを理解できるように追跡しました。スペースの再設計は段階的に展開されたため、中国で学んだ教訓を EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)やラテンアメリカでも活かすことができました。
デザインの強化
WeWork のデザインチームは、安全性と快適性に重点を置き、特定エリアのイメージを再構築しながら、これらの重要ポイントをスペース全体に反映させました。
安全で居心地のいいコミュニティデスク
コミュニティデスク はメインとなる受付エリアで、メンバー、ゲスト、WeWork コミュニティチームが集まって会合する場として機能しています。このエリアをデザインするにあたり、「6 フィート(約 2 メートル)」おきに床にラインを引いたり、使い捨て手袋のディスペンサーを設置したり、見やすい場所に行動と衛生に関するガイドラインを表示したりしました。それにより、メンバーはワークスペースに足を踏み入れると、どのようにスペースを利用したらよいかがひと目でわかります。この時も、私たちの目的はこれまで同様、快適で居心地のいい雰囲気を作り出すことでした。
ラウンジの収容人数を減らす
ラウンジはすべての WeWork ビルにおけるコミュニティの中心地点です。そのことに変わりはありません。私たちは、メンバーが WeWork スペースに期待するコラボレーションのエネルギーを保ちながら、ソーシャルディスタンスと公衆衛生に関する新たな基準を満たすための措置を講じました。ラウンジの家具は撤去せずそのまま残しましたが、クッションや標識にはこのようなメッセージを表示しています「いつもラウンジをご愛用いただき、ありがとうございます。現在、ご利用にあたっては、細心の注意をお支払いいただくようにお願いいたします。」コーヒーテーブルやカスタムデザインのクッションなど、さまざまな目に付くところに、ソーシャルディスタンスについて注意書きを添えました。また、行動と衛生に関するガイドラインを目立つ場所に表示しました。
快適にコラボレーションできる会議室
会議室は、生産性を高めるための共有スペースです。メンバーが引き続き安全にコラボレーションやつながりをもてるように、私たちはこれらのスペースを強化するための取り組みを実施してきました。まず、ソーシャルディスタンスを確保できる座席配置に変更し、収容人数を削減しました。また、消毒シートディスペンサーなどの消毒用品を用意し、行動と衛生に関するガイドラインを目に見える場所に表示しました。
ホットデスクを交互に配置し、頻繁に消毒
ホットデスクは、さまざまな職場環境に分散されたメンバーが仕事をするための共有ワークスペースです。WeWork のデザインチームは、交互になるよう座席を配置したり、消毒シートディスペンサーなどの消毒装置を置いたり、見やすい場所に行動と衛生に関するガイドラインを表示したりなど、ホットデスクの消毒を強化し、業務上必要な距離を維持するようにしています。
こうした対策は常に強化され、公衆衛生ガイドラインの改定やメンバーのニーズに対応しています。しかし、WeWork とデザインチームにとって常に変わらないものがあります。それは、高品質なデザインを実現する、ということです。WeWork では高い水準の標準化を維持しており、スペースと性能に関する厳しい基準を採用しています。その上で、個々のワークスペースに最適な色彩、仕上げ、アート作品を選び、特別で唯一無二な空間に仕立て上げます。
Ebbie Wisecarver は、WeWork 副社長兼デザイン部門のグローバル総括。2015 年に WeWork に入社して以来、オーストラリア担当のアーキテクトおよび開発プロジェクトマネージャー、アジア、オーストラリア、インド担当のデザインディレクター、WeWork Japan のプロジェクトデリバリ責任者などを歴任しています。前職では、ニューヨークの Diller Scofidio + Renfro、Steven Holl Architects に勤めていました。ペンシルバニア大学で建築学修士号を取得。大阪の竹中工務店本社での夏季インターンシップを含め、数多くの巡回展やフェローシップに参加しています。ニューヨークのブルックリンに暮らす Wisencarver の趣味は、ランニングと旅行です。