新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響でリモート勤務体制やハイブリッドワークモデルへの移行が加速する中、地域や業界を問わず企業は働き方の未来やワークスペースの将来について考えを巡らせています。そして、この 1 年半で何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを探り、長期的に持続可能なハイブリッド戦略を構築する方法を探っています。
Colliers はこのテーマに関する重要な洞察を明らかにするために 2021 年初頭に調査を開始し、ワークスタイルに関連する従業員と雇用主の希望や、それらをハイブリッドモデルにどのように取り入れられるかについて、理解を深めました。現在までに同社は、米国内のさまざまな業界や地域のビジネスリーダーや従業員9,400 人以上を対象に調査を行っています。
本記事では、この調査結果から得られたいくつかのポイントを挙げ、組織が画一的なアプローチからそれぞれの組織や従業員に合ったハイブリッド戦略の採用へと移行できる方法についてアドバイスを紹介します。
ハイブリッドの動向:従業員と経営者が考える働き方の未来
Colliers の調査によると、パンデミック以前から現在に至るまでのリモートワークおよびハイブリッドワークに対する認識の変化が反映されて、3 つの重要な動向が浮かび上がってきました。
1. 従業員のリモート勤務への希望が高まっている。
本調査によると、「絶対に在宅勤務しない」と回答した人の割合は、パンデミック以前の半数近く(47%)からわずか 6% にまで減少しました。
2. 従業員やマネージャーの半数以上が、リモートで仕事をするようになってから労働生産性が高まった、または大幅に高まったと回答している。
Colliers の調査によると、ほとんどのマネージャーは、チームメンバーが頻繁に、あるいは大半の勤務を、リモートで行うことに賛成しています。
3. 多くの業務活動は、職場であってもリモートであっても同じように対処できる。
一方、同僚との共同作業は他の活動と異なり、回答者の約 40% が、職場の方がリモートよりもはるかに共同作業しやすい、あるいはややしやすいと感じています。
貴社に合ったハイブリッドワークスペースモデルは?
「ハイブリット」は、便利なキャッチコピーとしてよく使われます。しかし、ハイブリッド勤務の概念は組織によって大きく異なり、また、ハイブリッドが持つ意味も、経営者と従業員の間で、全く異なる可能性があります。
すべての組織に当てはまる万能型のハイブリッドモデルはありませんが、3 つの異なるスタイルのハイブリッドワークプレイスモデルが、現時点で中規模から大規模の企業が導入できる選択肢として浮上しています。それでは、各モデルについて知っておくべき特徴をご紹介しましょう。
第 1 の選択肢:柔軟性が最も高く、リモートワーク優先で、個人に選択権がある
- 従業員がリアルタイムで働きたい場所を決定する
- いつ、どこにいるべきか、決まった流れやスケジュールはない
- 個人がスケジュールや勤務場所を選択する
- 非常に柔軟
第 2 の選択肢:コア通勤日のあるモデルで、オフィス勤務優先の戦略
- ある程度のオフィス勤務が全員に求められ、チームは予定されている会議の日時を調整する
- 週のうちコア通勤日でない日はフレキシブルに勤務できる
- チームでスケジュールや勤務場所を調整する
- ある程度の柔軟性がある
第 3 の選択肢:柔軟性が最も低い、トップダウン型のアプローチ
- 決められた日に従業員はオフィスにいなければならない
- 出社人数を管理しやすい戦略
- マネージャーがスケジュールや勤務場所を選択する
- 柔軟性なし
Colliers のフレキシブルワークスペースコンサルティングの責任者である Will Burchfield 氏は、上記のハイブリッドソリューションのあらゆる面について入居テナントにアドバイスしてきました。成功の鍵となるのは、当初期待する成果が得られなかった場合にも、反復と方向転換をいとわないということです。どのハイブリッド戦略であっても、効果的に機能させるためには、従業員とマネージャーがお互いに期待していることを明確にする必要があります。一歩距離をおいて、従業員とマネージャーに何が求められているのかをじっくり検討し、従業員の考えとマネージャーの考えに齟齬がないようにすることが非常に重要です。
ハイブリッドワークスペース戦略を成功させるための 9 つのヒント
企業が新しいハイブリッドモデルを試す際には、試行を繰り返し、変化を受け入れる姿勢であることが重要です。
それ以外にも、企業は従業員エンゲージメントの変動といった重要なデータにも注意を払う必要があります。最終的に、従業員の意識は成功の鍵を握る最も重要な要因の一つでもあるからです。
これらのステップに加えて、ハイブリッドワークスペースモデルへの移行を成功させるために、Colliers のエキスパートは以下のアプローチを推奨しています。
- 組織のニーズを把握するために、アンケート調査やフォーカスグループを実施し、そこで得た洞察を行動に移す。
- オフィスの役割を見直し、再定義して、リモートで業務に参加する従業員への公平性を念頭に置きながら、イノベーションや共創のような価値の高い活動を支えるスペースを設計する。
- チーム規範を設定する。どんな場面が重要なのかを考え、チームにとってどの会議やイベントが大事で、対面で行う必要があるかについて共通認識を持ち、誰が、いつ、どこにいなければならないか優先順を確立する。
- 従業員とマネージャーの双方に求められているものを明確に設定し、それを伝える。
- ハイブリッドな勤務環境で従業員が効果的に働けるように、マネージャーに対して十分なトレーニングを行う。
- さまざまなコミュニケーションの方法に対応できるテクノロジーに投資し、リモート勤務環境をサポートするコミュニケーションのプロトコルを設定する。
- スペースの利用について具体的な目標を決め、成功を測定できるようにする。
- 従業員のエンゲージメントスコアやその他のデータポイントを追跡し、出社率やスペース利用率(会議室を利用した時間数など)のような変動を追跡することで、取り組みの効果を測定し、従業員が必要としていると組織側が予測していたことと、従業員の実際の行動や活動との間に齟齬がないことを確認する。
- 「試行・学び・進化」のマインドセットを持ち、必要に応じてそのサイクルを繰り返す。
ここで紹介した効果的なアプローチを採用すること、つまり、頻繁に従業員の実態を調べ、エンゲージメントなどの従業員のKPIを定期的に記録して変化を把握し、変化し続ける期待事項をタイムリーかつ明確に従業員に伝えるといったことは、新型コロナウィルス変異株の出現や感染急増によって不確実性が増しつつある職場環境において、より一層重要になるでしょう。
Ryne Raymond は Colliers のワークスペースアドバイザリー担当バイスプレジデント。Charlotte Timms は Colliers のシニアディレクター。Mary Kearl はニューヨーク大学でジャーナリズムの学士号を取得し、バルーク大学ジックリン・ビジネススクールで MBA を取得。Adobe、Pinterest、Zillow、Target、HuffPost、Business Insider など、世界中の著名なブランドや出版社とのコラボレーション経験を有するライター兼マーケティングのプロフェッショナルです。
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