未来に向けた柔軟な不動産ポートフォリオの構築方法

新型コロナウィルスの影響で悪化している、長引く問題を解決するために、柔軟な不動産に注目する企業が増えています

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は、企業不動産業界で起こっている構造変化を加速させました。この変化は、クラウドコンピューティングなど他の産業がこの 10 年でたどった変化に似ています。ビジネスリーダーたちは、経験と品質を犠牲にすることなく、それでいて柔軟性やオプション性が高く、コスト効率の優れた方法で製品(または不動産)を調達できないかを思案しています。

クラウドコンピューティングへの移行は、現在、企業不動産業界で起こっていることと明らかに似ています。クラウドコンピューティングは、2008 年の世界金融危機を経て、企業がこれまでより手間をかけずに低コストでデータを保存できる方法を模索していたことに伴い、飛躍的に成長しました。クラウドコンピューティングの価値提案は、柔軟な不動産の価値提案に似ています。クラウドコンピューティングのプロバイダーであるアマゾンウェブサービスによると、クラウドコンピューティングのユーザーは以下のようなことができます。 

  • 変動費の取引資本費用
  • 規模の経済によるメリット
  • 収容能力の推測が不要
  • スピードとアジリティの向上
  • データセンターの運用費と維持費が不要
  • 瞬時にグローバル展開が可能

2008 年の時点では、柔軟な不動産は広範にわたり利用できませんでしたが、現在はそれが可能になっています。このように、企業不動産業界は、かつて世界金融危機の後にテクノロジープロバイダーが経験したような変化を現在経験しています。企業は現在、ますます柔軟な不動産への関心を高めています。CBRE によると:

  • 企業のリーダーやマネージャーのうち 76% が、新型コロナウィルスが収束したら自宅近くのサテライトオフィスまたはコワーキングスペースから勤務すると回答しました。
  • CRE(商業不動産)の幹部のうち 71% が、組織のコストの削減要因を特定し、実行していくことが優先事項だと回答しました。(新型コロナウィルス以前と比較して 10% 増)
  • CRE の幹部のうち 58% が、企業の価値を創造できる方法を積極的に特定し、実行していくことが優先事項だと回答しました。(新型コロナウィルス以前と比較して 3% 増)
  • CRE の幹部のうち 65.3% が、今後 3~5 年間でポートフォリオの面積が減少すると予想していると回答しました。(新型コロナウィルス以前と比較して 42% 増)

ここでは、この構造転換の原因と、CRE のリーダーが企業不動産ポートフォリオをより効果的に再構築するために利用できる戦略を探ります。

新型コロナウィルスの影響で、ビジネス上の課題はより深刻に

雇用主と従業員は常にさまざまな課題を抱えていますが、2020 年の新型コロナウィルスの大流行は、こうした課題を悪化させました。

雇用者側の課題: 

  • 変動の多い時期の収益、固定費、変動費を予測
  • ブランド、製品、サービスを作り上げる際の運用上の課題に直面
  • 2020 年はコスト削減と運用効率の向上が最優先事項となりました。この優先順位の変化に適応するには、多大なリソースが必要であり、また結果の予測が困難なため、適応には長期間かかる可能性があります。

従業員側の課題:

ビジネス上の課題に対する新しいソリューション

これらの課題は目新しいものではありませんが、問題解決のためのアプローチは進化しています。以前なら、ビジネスリーダーがこれらの課題を解決するための選択肢は 2 つしかありませんでした。従業員を従来型の職場に復帰させるか、あるいは在宅勤務を許可するかのいずれかです。しかし、それぞれの選択肢には犠牲も伴いました。 

  1. 従業員を従来型オフィスに復帰させる:従業員が在宅勤務で直面している課題の多くが解決されるかもしれませんが、それでは雇用主の課題を解決したことにはなりません。なぜなら、広い面積のオフィススペースを調達、設計、建設、運用することは、商業不動産の責任者の目的、すなわち会社のコスト削減と一致しないからです。
  2. 在宅勤務モデルを永続的に採用する:リモート勤務の方針を強化しても、雇用主の課題は解決されるかもしれませんが、従業員の課題には対処できません。さまざまな業界での調査によると、従業員は職場へ戻りたい(週に1日からも含む)と感じているケースが多くあります。

以前は妥協が必要でした。商業不動産責任者の目的(低コストを維持)と従業員側(働く人の幸福を維持)の目的の両方を達成できる状況は存在しなかったのです。

しかし、柔軟な不動産がある 2020 年なら、それが可能です。オフィスに従業員を復帰させながら、同時にコストを節約することができます。これからは、柔軟な不動産こそ、上記の問題を妥協することなく解決できる最も効果的なツールです。

未来の不動産

これまで企業の不動産ポートフォリオは静的であり、ほとんどの企業は長期のリース契約をしていました。ビジネスと従業員のニーズがますます変化していくこれからは、より多くの選択肢が必要とされるため、短期契約で柔軟なオンデマンドのワークスペースに対する需要が高まり、その活用が増えていきます。将来的には、柔軟な不動産に重点が置かれた、現在よりもはるかに柔軟性の高い不動産ポートフォリオへと変わっていくでしょう。

下の図は、ビジネスの不動産ポートフォリオが変遷している様子を示しています。

企業のワークスペースの利用は、4 つのタイプの組み合わせとなっていくでしょう。

  • 長期契約の専用オフィス:本社の従業員数や設備投資額が安定しており、リスクを受け入れる余裕のある企業に最適です。
  • 短期契約の柔軟なオフィス:上記以外のあらゆるオフィスニーズを満たしたい企業に最適です。(WeWork には、1 人から 1000 人まで収容できる規模のオフィスが世界中に 800 以上あります。契約期間は1カ月から3年までで、アメニティも充実しており、入居後すぐにご利用いただけます。)
  • オンデマンドオフィス:従業員がどこからでもリモート勤務できるようになります。必要に応じて、スポット的に、柔軟にワークスペースを利用できます。(WeWork の All Accessがあれば可能です。月々の固定料金で、従業員は 150 都市にある数百の WeWork ロケーションのどこからでも仕事ができます。他の WeWork スペースと同様に、企業が従業員のためにオフィスを運用し財務上の債務を抱える必要はありません。)
  • 部分的に在宅勤務: あらゆる業界で起きているさまざまな変化を考慮すると、従業員は少なくとも部分的に在宅勤務が認められるようになるでしょう。

企業はどのようにポートフォリオを再構築できるか

将来の不動産ポートフォリオを構築するために、企業はワークスペースの広さ、使用、場所を意図的に、頻繁に、継続的に調整し、最適化する必要があります。ここでは、企業がそれを正しく行うために考慮すべき事項をいくつか挙げています。

  1. 会社の優先順位:ビジネスリーダーは、ビジネスの優先順位が不動産戦略に反映されているか確認すべきです。考慮すべき優先事項として、リスクの最小化、不動産に充てられた設備投資費の転換、運営の効率化、人材の充実があります。
  2. 指標: 適切なデータを利用すれば、企業は従業員に必要な不動産の面積を推測しなくて済むようになります。これにより、従業員 1 人あたりの年間不動産予算、先行設備投資の削減、リース総額や平均リースの有効期限の予測、利用率、従業員 1 人あたりの面積、従業員の満足度を安定して測定することができます。
  3. 時間の単位:かつて企業では 10 年単位で不動産ニーズを予測していました。家主とのリース契約がそのようになっていたからです。しかし、現在では従業員数の予測は非常に短い単位で行われています。柔軟な不動産であれば、企業は 5 年を超える単位ではなく、わずか 1〜2 年の単位で予算や従業員数の増加を見積もることができます。
  4. 従業員からのフィードバック:企業は従業員の希望に基づいて不動産の意思決定を行うべきです。調査と再評価を繰り返し行うことにより、企業は従業員のどこでどのように働きたいかという希望を把握できます。
  5. ワークスペースの選択肢:企業は将来的に、長期および短期契約オフィス、オンデマンドオフィス、在宅勤務など、さまざまな種類のオフィススペースを活用する必要があります。現在、WeWork All Access など、以前よりも多くの選択肢が揃っているため、従業員は自分で選んだオフィスから仕事ができます。ビジネスリーダーはポートフォリオを再構築する際に、これらの組み合わせを取り入れて柔軟性を最大限に実現できるようになりました。
  6. 柔軟な契約内容:WeWork では、同じ地域内の資産から別の資産へ金融債務を移転できるようにするなど、企業が活用できる新しい柔軟なオプションを作り出しています。これにより、以下のようなハブ&スポーク方式が実行可能なソリューションになり、企業は都市の全域で自社拠点を定期的に見直すことができます。

私たちは将来、2020 年を振り返ったとき、柔軟な不動産を実現することでユーザーに利益をもたらせるようになった構造変化が企業不動産業界に生じた年だと思い返すことでしょう。それは、この 10 年でクラウドコンピューティングが多くの企業に恩恵をもたらしてきたのと同じように。これこそ、世界的なウィルスの流行によって加速された企業不動産の重要な構造転換です。

従来型の不動産利用からより柔軟な不動産の活用に移行する企業は、この変化を経ながら、これまでとは考え方を変えていく必要があります。しかし、心配はいりません。これは他の多くの業界が過去数年でたどったものと同じ移行なのです。柔軟な不動産に移行することで、企業はスピード感を持って、確実に、マイナス面を抑えて、従業員の経験に妥協を生じさせずに適応できるようになります。

マイケル・キングは WeWork のエンタープライズチームのシニアディレクターで、大手クライアント向けの移行戦略とポートフォリオ戦略の策定および実行を担当しています。応用ファイナンスの修士号を取得しており、オフィス、小売、産業部門においてリース、評価、買収、売却の経験があり、オーストラリア、ヨーロッパ、米国で取引を実行しています。WeWork 入社前は、市場をリードする REIT への投資に従事していました。

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