より持続可能な未来を見据えて行動するフードカンパニー 5 社

ストレスフリーな生育環境で育った鶏の卵、食品廃棄物で作られた資源など、地球を救うための様々な施策を展開している組織をご紹介します。

避けて通ることはできません。私たちの食料の選択は、地球環境に直接影響を及ぼします。食肉の消費が削減されていることは、地球温暖化の原因となる 温室効果ガス の削減に向けた大きな一歩ですが、消費者にも食品会社にも、地球への負荷を減らすためにできることがまだ多くあります。

環境に優しい食生活 への必要性は ますます切迫 しており、この使命に挑む食品会社の多くが、気候変動の危機に対する解決策を求めています。以下に紹介する組織はいずれも WeWork フードラボ メンバーで、より持続可能な未来を構想しており、食料を通じて、こうした未来の実現に向けて懸命に取り組んでいます。

食品廃棄物でおいしさの創出へ

Spare Food Co. は、これまで廃棄されていた食料を、レシピを工夫することで調理に用い、企業が節約できる方法を査定しています。写真提供:Spare Food Co.

Spare Food Co. WeWork Food Labs, 148 Lafayette St,(ニューヨーク州)

アダム・ケイとジェレミー・ケイの兄弟は 2019 年 5 月、地球が直面する深刻な食品廃棄物の問題を解決する一助となるために、Spare Food Co. を起業しました。アメリカでは、栽培された食料のうち約 40 %が廃棄されるという現実があります。Blue Hill のシェフ兼共同設立者の ダン・バーバー と 20 年近く共に働いたアダムは、「普通のシェフだったら見向きもしない」植物の一部を調理に利用する革新的な方法を学びました。その結果、食料と食料生産体制に対する彼の考え方は、「根本的に」変わりました。ジェレミーは、パタゴニアなどの持続可能なファッションを追求するブランドで長年仕事をしてきました。兄弟は、これまで見過ごされ、使われてこなかった食材から製品をつくることに成功しました。そして、ホスピタリティ業界やファーストフード業界、大規模な社内キッチンをもつ企業、スーパーマーケットなどに売り込み、食品廃棄物を回収して市場に再投入しています。

「社名を Spare Food(予備の食べ物)としたのには意図があります」とジェレミーは言います。「廃棄食材を食べようとしたり、廃棄食材について考えたり、食材を廃棄することに罪悪感を感じたりする人はいません。でも余った食材を「予備の食べ物」と呼ぶと、食料生産システムの中で、どうしたらもっと予備食材に価値を見出せるかと考え始めます。」従来のように「廃棄物の削減」として管理しても、廃棄物は減らせません、とジェレミーは言います。ところが、食材を「予備」と捉えることで、ジェレミーがいうところの「食材の最適化」にもっと注力できるのです。 

「食料の生産は、終わりのない競争です」とアダムは言います。アメリカは、既に存在する資源の最適化についてもっと考えなくてはいけないと説明します。Spare Food は、企業が変更管理に投資して、普段なら廃棄される食材を使い、ソースや調味料、スープのだし、ディップ、ドレッシングなどに生まれ変わらせる手伝いをしています。

持続可能な魚のみを提供。寿司の新しいかたち

Zoku, WeWork Food Labs, 148 Lafayette St(ニューヨーク州)

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❤️を込めて、私たちのキッチンで作りました!

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Zoku Sushi のメニューにウナギやマグロはありません。これらは日本食レストランで人気の高い魚ですが、Zoku では意図的に置いていません。「幅広く入手可能な原材料を、季節と味に基づいて調達しています」と Zoku の創業者チャーリー・イーは言います。彼は 2019 年 2 月に Zoku を立ち上げました。「クロマグロを食べなくても、寿司を楽しむことはできます。」

イーの目標は、新鮮で持続可能な寿司を持続可能な価格でお客様に提供することです。Zoku のウェブサイトには、毎日更新される「入荷表」が載せられており、その日にどんな種類の魚が採れ、どこから調達したのかについて、すべてわかるようになっています。「私たちは人々がもっと白身魚を食べるようにしていきたいのです。白身魚の方がはるかに入手可能であり、浮いた分のコストを消費者に還元することができます」と彼は言います。美味しく、かつ持続可能な食べ物をつくるために、イーは元 Nobu のシェフに声をかけ、下ごしらえやシェフたちの修業、メニューの考案などについて協力を仰いでいます。 

Zoku はただのレストランではなく、「デジタルキッチン」だとイーは言います。座席はなく、注文はデリバリーのみです。デリバリーは消費者にとって利便性が高く、業界ではこうした バーチャルキッチン の増加に着目しています。「ニューヨークのような都市部でレストランを経営するには、コストが高すぎます」とイーは言います。Zoku は一般的なレストランと比較してデリバリーへの投資を約半分に抑えているため、その分が消費者に還元され、従業員は生活の質を保つことができます。「Zoku のキッチンで働く人たちの平均給与は、最低賃金をはるかに上回っています」とイーは言います。Zoku の従業員は全員、ニューヨークの最低時給 15 ドル以上を稼いでいる、と彼は付け加えました。 

Zoku が最初に受けた注文は、WeWork コミュニティのメンバーが、あるイベントに出す美味しいケータリングを探していたときでした。このことだけでも、WeWork のパートナーシップは共生的であることがわかります。Zoku のネットワークはさらに拡大を続け、現在、ニューヨークのメトロエリアにある約 25 の WeWork 拠点にデリバリーをしています。このデジタルキッチンは西海岸にも登場する予定です。

植物由来フードを世界標準にするイノベーションをサポート 

The Good Food Institute, WeWork One City Center(ノースカロライナ州)

Good Food Institute は植物由来の食品を普及させる非営利団体で、動物の肉を食べることは、そのうち時代遅れの習慣になるだろうと考えています。2016 年に発足して以来、植物由来の食品と細胞から作られたクリーンミートの生産に取り組む初期段階の企業に対し、さまざまなサービスやひらめきを提供しています。植物由来フードへの関心は高まりを見せ、熱心な支持者を集めています。そこで GFI は植物由来フードのブランド構築をサポートし、業界内で植物由来フードが席巻しつつある現実を祝っています。例として、ダンキンドーナツは先日、Beyond Meat との提携を発表しました。

GFI の共同設立者兼エグゼクティブディレクターであるブルース・フリードリッヒは、未来は動物や屠殺を経た肉以外のものからタンパク質が供給される世界になると考えています。「技術革新によって、産業システムからあらゆる動物が取り除かれるだろう」とフリードリッヒは言います。 

「もし植物由来のクリーンミートの方が収益性が高かったら、企業は工場で食肉を生産し続けようとするでしょうか?しません。」とフリードリヒは最近、書きました。「このことを歴史は何度も証明してきました。周囲をよく見回してください。もう輸送に馬は使いません。農耕に牛は使いません。油を採るために、クジラを殺すこともありません。かつてのように、インスリンの製造に豚は使いませんし、郵便配達に伝書鳩を使いません。歴史上、動物に代わる優れた代替案が、動物の産業的利用を定着させた例はないのです。」

乳成分不使用ミルクをオーダーメイドで製造。二酸化炭素排出量の削減へ

NüMilk, WeWork Food Labs, 148 Lafayette St(ニューヨーク州)

NüMilk 製造マシン。新鮮な乳成分不使用ミルクを 1 分以内でつくって瓶詰めします。写真提供:NüMilk

アーモンドミルクが現代のキッチンで不動の地位を獲得し、健康志向と環境のよい好循環が生まれていることは間違いありません。それでも、いかに乳製品の代替品が「地球にやさしい」と考えられていても(動物由来ではありませんから)、液体の入ったカートンを A 地点から B 地点まで輸送するには環境に負荷がかかります。 

NüMilk は、牛乳の生産と輸送から生じる環境への負荷を軽減させます。キオスクマシンは、1 分もかからずに非乳製品ミルクを製造し瓶詰めします。「当社の革新的なサプライチェーンにより、NüMilk は全国的なメーカーよりも新鮮で栄養価が高く、おいしい非乳製品ミルクを提供できます。しかも、環境負荷は軽くなります」と、最高経営責任者のウィル・フィンケルシュタインは言います。「液体であるミルクを全国に配送することは、経済的にも、そしてこれが重要な点ですが、環境的にも効率的ではありません。」

NüMilk キオスクマシン(製造機)があれば、トラック 1 台分の NüMilk 原材料で、全国に届けるために日々工場で製造される牛乳のトラック 8 台分と同じ量の非乳製品ミルクを製造できます。サプライチェーンから液体部分を取り除くと、製品の重量が減少するため、輸送の負担が軽減されます、とフィンケルシュタインは説明します。「NüMilk 製造機は工場の小型版で、その場でミルクを製造しています。」この機械は、ニューヨークメトロエリアのホールフーズマーケットのいくつかの店舗に設置されています。

人道的に育てられた新鮮な有機卵を、大量に流通

Handsome Brook Farm, WeWork Food Labs, 148 Lafayette St(ニューヨーク州)

質の高い飼育環境が与えられた産卵鶏。鶏卵業界が飼育環境を優先したのはこれが初めてと言えるでしょう。写真提供:マイケル・ジョージ、Handsome Brook Farm

鶏卵業界は、毎月 90 億個という驚くべき数の卵を効率的に生産する方法を生み出しましたが、鶏の飼育環境の質はほとんど考慮されてきませんでした。養鶏は鶏にとって辛いだけでなく、多くの環境資源も消費します。このような驚異的な速度で膨大な数の卵を生産するには、鶏小屋の冷房と暖房に大量のエネルギーが使用され、また飼育の過程で大量の廃棄物が排出されます。 

Handsome Brook Farm の卵は農家直送の高品質でありながら、大量流通を可能にしています。(つまり、地元の直売所を探す必要はありません)。卵は 10 州にまたがる 65 を超える小規模農場のネットワークから調達されており、すべてが放牧場で育てられた有機卵です(まさに最上級品質の卵です)。Handsome Brook Farm では、鶏一羽あたり少なくとも 108 平方フィートの牧草地に放し飼いにされ、鶏は牧草を食べ、化学肥料を使わない有機無農薬の餌が与えられます。同社はサプライチェーンの考え方を鶏卵業界に応用しました。卵は、動物にとって厳しい現実ともいえる機械化システムを通じて消費者に届けられます。その一方で、同社は血の通った人道的なアプローチを採用しており、個々の生産者はこうしたやり方を優先する傾向にあります。 

「動物たちの飼育環境を改善すると、生産性が上がることがわかりました」と、同社のマーケティング責任者であるマット・シャーマンは言います。この 6 年間で、Handsome Brook Farm はアメリカ最大の放牧飼育有機卵の生産者になりました。農場のネットワークをクラスター化することにより、同社は「農家が自分たちで管理できる小さな農場を維持しながら農業を継続できる持続可能なシステムを構築しました」とシャーマンは言います。「その結果が、よりおいしい卵です。」

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